学藝饗宴とは

ー舌先に、いつまでも消えぬ灰の味だけを残すという死海産の果実みたいな恋があるのだろうか。

 これはひとつの問である。それも半ば答えを知りながらそれでも問わずにはいられない、そんな類の問である。
 引用は21Sセメスター課題図書『死都ブリュージュ』における記述である。そしてこの作家ローデンバックがその才能を磨き多大な影響を受けた場が、詩人マラルメの主宰する爛熟期パリのサロン、「火曜会」であった。本ゼミナールの理念のひとつには、この「火曜会」をはじめとしたサロン文化を現代の大学に呼び戻すことがある。それはみなで共通の解を求めることを目標としない。むしろそこで目指されるのは、各々が各々に頭から離れなくなるような問を得ること、さらに言えば、それをうまく問として設定・精錬することである。

 ある哲学者は、良い問とは設定されるやいなや解かれるものだと述べた。問題は常にまず立てられる方にある。そのような問立てを希求する者に最良の友と本が見つかる場所が、駒場にはある。

 已むに已まれぬ問に自覚的に身を委ねるような、問う者を歓迎する。

駒場すずかんゼミナール『学藝饗宴』